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国見のスープ (花国花)

 

 猫の味がする、と呟いた国見の声が、あまりに普通だったから、「猫食べたことあるんだ」と返した自分の声からも自然とふざけた感じは消えていた。猫食べ たことあるんだ。なんて現実離れした会話だろうか。国見はうんともすんとも答えずに、鍋の中のスープをもう一度おたまに掬って赤い舌先を伸ばしてほんの少 し舐めた。瞬間、眉間に皺を寄せて目を側めて、すっぱいような苦いような顔をして見せた。猫みたいな顔だった。

 

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国見ちゃんのスープ

 

「猫のスープが出来ました」 

 そう言って鍋を食卓に運んできた国見ちゃんの顔はいつも通りだったから、そっか、猫なんだ、と俺は一瞬疑う心を忘れてしまった。

「いやいや」 

 食卓に置かれた鍋の蓋を取ると、薄い色のスープの中にじゃがいもとにんじん、たまねぎらしきものが小さく切られて浮かんでいた。国見ちゃんの言う“猫のスープ”とやらは、俺にはコンソメスープに見えた。

「これコンソメスープって言うけどなぁ、日本では」

「コンソメの味しませんよ」

 国見ちゃんは時より変なことを言う。そういう変なところは、心を許した相手にしか見せないと思いきや、うっかり道端で披露したりする。個人的感情 の混じらないとても常識的な発言をしたりする一方で、個性的すぎて話が噛み合わなかったりするところが、俺には珍しく見えて、そして好きになった。つまり 俺は、国見ちゃんの変な子な部分も好きなのだ。

「何使ったの?

」「コンソメですけど?」

 じゃあコンソメスープじゃん、という言葉は堪えて、俺はおたまで掬ってスープを味見する。

「……猫だ」

 思わず国見ちゃんを見ると、そうでしょう、とでも言いたげなどこか自慢げな顔をしていた。

 

 

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