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「飛雄も二十歳かぁ。あんなに小さかったのになぁ。なんか感慨深いわ、俺もお兄さんになったなぁ」

「そうっすか」

「初めて会った時のお前なんかこんっなに小さい癖にすっごい無愛想で超生意気でほんと可愛げの無い奴だったんだよ」

 及川は身振り手振りでもって大げさなリアクションを交えつつそう言った。そんなことはない、と否定しようとして、やはりそういう節もあったかもしれない、と影山は口を閉ざす。何も言わない影山を見て何を思ったのか、

「あれ~、怒った?」

 と、及川は嬉しそうにニヤニヤ笑って顔を覗き込んでくる。

「違います」

「むくれちゃって~」

二十歳になるのに子どもみたいだね、と及川はさっきと真逆のことを言った。

 影山はもうすぐ二十歳になる。しかし、影山にとって誕生日だからどうとか、二十歳だから特別な思いがあるとか、そういったことは一切なかった。今日は昨日の続きで、明日も今日の延長線上にあって、一ヵ月、一年という単位は生活するうえで便宜上そう呼んでいるだけで、何も変わらないと思っていた。だから、及川の言うような感慨みたいなものは、はっきり言ってわからなかった。

「お前、誕生日来たらすぐ成人式じゃん。どうすんの?帰んの?

「いや、練習あるんで。こっちいます」

「ふーん。まぁお前も金田一や国見ちゃんと仲良く写真撮るようなキャラじゃないもんねぇ」

 ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、及川はソファにふんぞり返って影山の反応を窺っている。及川はよくこういう下らない意地悪を言って、影山の反応を窺ってくる。影山がムッとしたら笑いながら「ごめんねぇ」とか「傷付いちゃった?」とか「かわいい」とか適当なことを言いながら影山の頭を抱きしめるようにして撫でて、そうして服の下に手が入ってきてエッチなことをさせてくれる。たくさん舐めてくれるし、噛んだりして痕を付けても怒らないし、イク時に力任せに抱きしめてもかわいいと言って喜んでくれる。

「飛雄、二十歳の誕生日は特別にエッチなことしよっか」

 影山にとって、今日は昨日の続きで、明日も今日の延長線上にあって、だから誕生日だからどうとか、二十歳だから特別な思いがあるとか、そういったことは一切なかった。

 でもそういう申し出なら受けてもいいと思ったので、二十歳の誕生日は及川に振袖を着てもらってコスプレエッチを頼もうと思う。

 

 

 

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