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くらくら

 

 

 

 自分の体が熱くて、芯から熱を持ってジンジンと痺れるようだった。早急な手付きで撫で上げたこの人の引き締まった腰も、自分の体と同じくらい熱かった。スウェット越しに熱く硬くなったものを押し付けて、まくり上げたシャツの下の胸の飾りを舐めて、吸って、唾液でぐちゃぐちゃにした。

 

東京は12月24日の深夜から雪が降り出して、翌日になっても止まなかった。大雪で交通機関が麻痺した大都市は全く機能しなくなって、部活は休みになった。久しぶりの休みでも外がこの調子では出かけることは出来なくて、俺たちは久しぶりに家の中で二人きりの時を過ごした。

外の大雪に比べ、暖房の効きが悪い古いエアコンはこの部屋を十分に暖めなかった。及川さんは余っていたにんじんと、少し芽の出たじゃがいもで温かいスープを作ってくれた。あまり料理をしない二人の家に、他に余っている野菜はなかったから質素なスープだ、と言って及川さんは笑っていた。及川さんがじゃがいもの芽を包丁の下の尖った部分で抉り出すのを見て、俺は初めてじゃがいもの芽の取り方を知った。その手つきの器用なところが、バレーでの器用な采配を思い出させて、俺はなんだか興奮してソワソワした。

その場違いな興奮をひた隠して、二人でスープを飲んで、下らないテレビを見た。けれど興奮は収まらなくて、風呂に入ってもずっとむずむずしていた。風呂から出て、なんと言って誘おうかと迷っていたら、珍しく缶ビールを煽っていた及川さんが、俺を手招きをした。及川さんはソファに座ったまま立っている俺の腰をぎゅっと抱きしめて、その股間に熱い呼気を吹きかけながら、吐息交じりに「しよっか」と言った。その声は俺のスウェットに押し付けられ、くぐもっていて聞こえにくかったけれど、俺はほとんど本能的に感じ取って及川さんをソファに押し倒した。

 

及川さんは酒気を帯びた熱い息を吐きながら、合間に「あ」とか「ん」とか鼻にかかったえっちな声を出した。俺はその声が好きで、もっと言ってほしくて及川さんの胸の飾りを舌先で転がして、ちゅうちゅうと音を立てて吸い付いた。身体だけじゃなく頭の中まで熱に浮かされたようにくらくらした。気持ちよくなりたかったし、及川さんの声がもっと聞きたかった。

 手を這わせて、腰からわき腹に向かって撫で上げて、今度はそのまま下まで撫でさすった。及川さんはくすぐったいのか気持ちいいのか、「ひっ」と甲高い声を出して身をよじった。胸の飾りを舐めたり吸ったりすると、及川さんはびくびくと震えた。俺は腰を撫でさする手をそのまま及川さんのズボンの下に忍び込ませた。足の付け根を撫でながらゆっくり股間に近付くのがもどかしいのか、足をくねらせて俺の手を誘導した。俺が及川さんの胸をちゅうちゅうと吸う度に、及川さんはあんあん鳴いて、どんどんえっちになった。

 甲高い喘ぎ声と舌っ足らずな「きもちい」の間で呼ばれる「飛雄」という甘い声が俺は大好きだった。普段の及川さんはもっと高圧的で、冷たくて、素っ気ない声で俺を呼ぶから、こうしている時だけ、俺と及川さんは恋人同士なんだと実感できた。及川さんが俺のことを好きなのだと思うと、体の熱がもっと高くなって、また頭がくらくらした。俺は及川さんが好きで、及川さんも俺のことが好き。くらくらする頭の中で、俺はその事実を何度も何度も暗唱して繰り返した。

 

 

 

 

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